Jリーグの試合中継で見ていたシュート数と、試合後に公式サイトで見た数字が違っていた。これは珍しいことではなく、Jリーグのシュート数には複数の系統が並行して公開されているからです。

その背景には、どのプレーをシュートと判断するかという基準の違いがあります。海外のデータプロバイダーの基準を見ると、Jリーグとはまたカウント定義が異なる場合もあります。

Jリーグのシュート数は、2つの系統で公開されている

Jリーグ関連のサイトで公開されているシュート数は、大きく二つの系統に分かれます。一つはJ. League Data Site(data.j-league.or.jp)に掲載されているJリーグ公式記録。もう一つは、Jリーグ公式サイトの試合速報やスタッツページなどに掲載されているJ STATSです。

J STATSは試合中継でも使用されており、リアルタイムで両チームのシュート数が画面表示されるときには、J STATSのロゴも一緒に表示されています。

J1の2021〜2025年の5シーズンの全シュート数を並べると、以下のようになります。

シーズンチーム数Jリーグ公式記録 全シュート数J STATS 全シュート数
2025207,2129,149
2024207,7799,899
2023186,0237,579
2022185,9567,584
2021207,0958,962

同じシーズンの同じ試合群を対象にしているにもかかわらず、Jリーグ公式記録よりJ STATSのほうがシュート数が25%程度多く記録されています。毎シーズン一貫して差が出ており、偶然のバラつきではなく、構造的な違いがあることが読み取れます。

この違いの背景には、両者の成り立ちの違いがあります。Jリーグ公式記録は、試合の公式な記録として運用されてきました。一方、J STATSは、Jリーグが認める試合関連の競技データの総称で、シュート数だけでなく、選手個別のパスやドリブル、走行距離、ボール保持率、トラッキングデータといった幅広い情報を含みます。

同じJリーグのシュート数でも、両者の成り立ちが違うため、集計基準も異なるということです。

Jリーグのシュート記録基準を読む

Jリーグ公式記録のほうの基準は、JリーグコーポレートサイトのJリーグ記録基準で公開されています。

シュート

(1) 攻撃側チームの選手が直接得点することを目的にボールに意図的にプレーした場合、シュートを記録する

(2) (1) のケースでボールがゴールから大きく外れた場合はシュートを記録しない

ペナルティエリア外でのプレーの場合: ボールがゴールラインを越えた位置が、近くのゴールポストから11m以内(ゴールエリアとペナルティエリアの中間まで)であり、かつクロスバーから5m以内の高さ(地表からゴール3個分の高さまで)であった場合、シュートを記録する。

ペナルティエリア内でのプレーの場合: ボールがゴールラインを越えた位置が、近くのゴールポストから5.5m以内(ゴールエリアまで)であり、かつクロスバーから2.5m以内の高さ(地表からゴール2個分の高さ)であった場合、シュートを記録する。

(3) (1) のケースで、プレーしたボールが近くにいる守備側チームの選手に防がれた場合、シュートを記録しない。

ペナルティエリア外でのプレーの場合: 守備側選手が防ぐまで、3m以上の距離があった場合

ペナルティエリア内でのプレーの場合: 守備側選手が防ぐまで、1m以上の距離があった場合

(出典:Jリーグコーポレートサイト|Jリーグ記録基準

シュートとして記録されるためには三つの条件が必要です。攻撃側選手が意図的に得点を狙ったプレーであり、ゴールから大きく外れていないこと、そして至近距離でブロックされていないこと。

ここから読み取れるのは、Jリーグ公式記録がシュートを「実質的に得点機会と呼べるかどうか」で絞り込んでいる姿勢です。

海外データプロバイダーとの違い

このようなイベント定義の違いは、Jリーグの中だけの話ではありません。海外のデータプロバイダーも、それぞれ独自の基準でシュートを定義しています。

世界のサッカーデータ市場で大きなシェアを持つOptaや、分析・スカウティング分野で広く使われるWyscoutのシュート定義を見ると、意図的にゴールを狙ったプレーであれば、枠を大きく外れても、至近距離でブロックされても、シュートとしてカウントする傾向があります。

つまり、プロバイダーごとに「何を残し、何を捨てるか」の設計思想が違います。

絞り込む方式はシュート数の水準が低く出るのに対し、広く拾う方式は外れたシュートも含めて記録されるため、後からのフィルタリング分析にも対応しやすい。シュートを分母に持つ決定率(ゴール÷シュート数)も、絞り込む方式のほうが相対的に高めに出ます。

xGの思想と、Jリーグ公式記録の基準

ここで、xG(ゴール期待値)という指標の思想を踏まえて、Jリーグ公式記録の基準をもう一度見てみます。

xGは、シュートが得点になる確率を数値化した指標です。意図を持って放たれたシュートであれば、「1000本に1本決まる」ような遠目からの低確率なシュートも、計算の対象になります。その位置と状況から打ったという事実に意味があり、統計データとして残す価値がある——それがxGの背景にある考え方だと思います。

一方、Jリーグ公式記録は、攻撃側選手が意図的に得点を狙ったプレーであっても、結果として枠を大きく外れた場合や、至近距離でブロックされた場合には「シュートとして記録しない」という基準で設計されています。

「意図のあるアクションを確率で評価する」というxGと、「結果として実質的な得点機会と呼べるかで絞り込む」という日本の公式記録は、シュートに対する考え方が異なるように思います。データの入り口で「これは大きく外れたから記録しない」という判断を入れると、xGのような確率モデルにとっては、評価できるはずだったアクションを取りこぼす形になります。

このことは、Jリーグ公式記録の基準に問題があるという話ではありません。Jリーグ公式記録は、時代が変わっても同じ基準で記録を残し続ける役割を果たしています。ただし、xGのような切り口の分析指標を扱う場面では、別系統のデータを参照することが必要になる、ということです。

おわりに

同じ「シュート」でも、どこまでを含めるかは設計しだいです。Jリーグ公式記録の基準は、試合の公式記録として一貫した姿を保っています。一方で、xGのような確率モデルや、より細かい分析に取り組む場面では、シュートの拾い方が分析の幅にも影響します。

数字を見るときに「どの基準で集計されたものか」を一度確認しておくと、別のデータと並べる場面でも、数字の意味を取り違えにくくなるかと思います。

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