per 90(90分あたり)正規化とは

per 90正規化(per 90 minutes)は、選手のスタッツを「90分間プレーしたと仮定した場合の値」に換算する標準化手法である。

サッカーにおいて選手の出場時間は均一ではない。先発フル出場の選手もいれば、途中出場で10分しかプレーしない選手もいる。両者のシュート総数やゴール総数を直接比較しても、見えているのは能力差ではなく出場時間の差にすぎない。per 90は出場時間の違いを取り除き、選手間比較の前提条件を揃える役割を果たす。

per 90はサッカー固有の概念というより、出場時間が選手によってばらつくスポーツ全般で使われる、データ分析の基本作法のひとつである。サッカーにおいては1試合が90分であることから、90を分母に揃える形で広く定着した。

計算方法・仕組み

計算式は単純で、累計の指標値を出場分数で割り、90を掛ける。

(指標値 ÷ 出場分数) × 90

具体例として、450分の出場で5ゴールを記録した選手の場合、5 ÷ 450 × 90 = 1.0ゴール/90となる。「90分換算で1試合あたり1ゴール相当のペース」と読める。

per 90と混同されやすいのが「1試合あたり平均」(per match / per game)である。両者は似ているが、計算の基盤が異なる。

「1試合あたり」は累計を出場試合数で割る方式である。30分で交代した試合も、フル出場した試合も、すべて等しく「1試合」として数えられる。

「90分あたり」は累計を出場時間で按分する方式である。短時間出場の試合は試合長に応じて影響が小さくなり、長時間出場の試合は逆に大きくなる。途中出場が多い選手ほど、両者の値の乖離が大きくなる傾向がある。

読み方のポイント

per 90は選手単位の比較で本領を発揮する。「同じ90分プレーしたら、どちらの選手のほうが多くこのアクションをしているか」という問いに答えられる形に変換するため、出場時間が異なる選手同士のスカウティングや横断比較に向いている。

一方でチーム単位の指標では、per 90よりも「per match(1試合あたり)」が用いられることが多い。チームは試合中ずっとプレーしているため、出場時間にバラつきがほとんどなく、累計を試合数で割れば実質的に90分換算と近い値が得られる。スタッツを掲載するサービスでも、選手ランキングはper 90、チームランキングはper matchと、対象によって表示形式が分かれていることが多い。

派生形として、シュート1本あたり(per shot)やボールタッチあたり(per touch)といった別単位の正規化も存在する。それぞれ「機会あたりの効率」を見たい場合に使われる。

限界と注意点

per 90は便利な標準化手法だが、万能ではない。以下の限界を理解したうえで使う必要がある。

少ない出場時間で値が膨張する

90分しか出ていない選手が偶然1ゴールを決めれば「1.0ゴール/90」という非現実的な数値が並ぶことになる。これは実力ではなく偶然のサンプリングを反映している可能性が高い。ランキング作成時には最低出場時間の足切りが慣習的に行われる。

ポジション差を吸収できない

GKとFWのper 90タックル数を比較しても意味をなさない。per 90はあくまで「同じポジション内での比較」を前提とした手法である。

チーム戦術による機会量の偏りを補正できない

ボール保持率の高いチームの選手はパス機会が多く、低いチームの選手は守備機会が多い。同じ90分でも、選手が遭遇する「機会の総量」自体が異なる。これを補正する派生手法として、ポゼッション調整(possession-adjusted、PAdj)がある。

サンプルサイズとセットで読む必要がある

per 90で値が出ていても、その背後にある累計が少なければ、偶然の影響は依然として大きい。per 90単体ではなく、累計値や出場時間を並べて確認することが望ましい。

Jリーグ公式記録ではアディショナルタイムが計上されない

Jリーグの公式記録では、すべての試合の出場時間が90分を上限として扱われ、アディショナルタイムは出場時間に算入されない。たとえば後半アディショナルタイムから途中出場した選手は、実際に10分プレーしても1分としてしか記録されない。先発で出場し後半アディショナルタイムに交代した選手は、89分などと記録される。Jリーグ公式記録の出場時間からper 90を計算する場合、分母側にこうした系統的な誤差が含まれていることに留意したい。

関連する指標と概念

per 90を扱ううえで、以下の指標や概念もあわせて押さえておきたい。

  • サンプルサイズと安定性 — per 90の値が信頼できるかは、累計データ量に依存する
  • ポゼッション調整(PAdj) — チーム戦術による機会量の偏りを補正する派生手法。守備指標で広く用いられる
  • APT(実効プレー時間) — 90分のうち実際にボールが動いていた時間。APTを分母とする派生指標もある
  • 平均回帰 — per 90で極端な値が出ている選手は、長期的に平均値に近づく傾向がある