ポゼッション率とは

ポゼッション率(Possession Rate)は、試合中にチームがボールを保持していた割合を示す指標である。

日本語では「ボール支配率」と呼ばれることも多い。ただし、ここでいう「支配」は、試合全体を優位に進めていたことを意味しない。ポゼッション率が表しているのは、あくまでボールを保持していた量である。

たとえば、自陣で相手のプレスを受けながら横パスを続ける保持も、敵陣で相手を押し込む保持も、単純なポゼッション率では同じ保持として扱われる。ボールを長く持っていたことと、相手ゴールに迫れていたことは別の問題である。

そのため、ポゼッション率はチームのプレースタイルの傾向を反映する指標であり、攻撃力や試合の優勢をそのまま示すものではない。そこから何を生み出したかは、別の指標と組み合わせて読まれる。

仕組みと読み方

計算方式には違いがある

ポゼッション率の計算には、いくつかの考え方がある。

もっとも単純なのは、パス数を使う方法である。自チームのパス数を、両チームのパス数の合計で割れば、どちらのチームがより多くボールを動かしていたかを大まかに表せる。イベントデータだけで計算しやすい一方、実際にボールを持っていた時間を直接測るわけではない。

別の方法は、実際にボールを保持していた時間を測る方式である。この場合、アウトオブプレーの時間を除き、ボールインプレー中にどちらのチームが明確に保持していたかをもとに割合を出す。

さらに、主要データプロバイダーでは、誰がボールを持ち、いつそれが切り替わるかを基準にポゼッションを定義する例もある。Optaでは、同じチームによる一連のプレーをポゼッションの単位とし、相手がボールをコントロールした時点でポゼッションが終わる。FIFAのEnhanced Football Intelligenceでは、両チームの保持に加えて、どちらも明確にコントロールしていない「中立(In Contest)」という状態も分けて扱う。

つまり、ポゼッション率は「90分のうち何%持っていたか」という一見単純な指標に見えるが、実際には保持の始まりと終わり、ルーズボール、アウトオブプレー、両チームのどちらにも属さない時間をどう扱うかで値が変わる。

2022 FIFAワールドカップ ドイツ vs 日本の試合における、Optaの2区分方式(ドイツ73.9%、日本26.1%)とFIFAの3区分方式(ドイツ65.5%、中立11.7%、日本22.7%)のボール支配率の比較
同じ試合でも、計算方式によってポゼッション率の出方は変わる。中立状態を独立した区分として扱う方式もある

試合単位と累積単位で意味が変わる

1試合のポゼッション率は、相手の戦い方や試合展開の影響を強く受ける。

相手がハイプレスをかけてくる試合では、後方でのパス回しが難しくなり、早めに前線へ送り込む場面が増える。反対に、相手が低い位置でブロックを作る試合では、ボールを持つ時間は長くなりやすい。退場、天候、ピッチ状態、先制点のタイミングも、試合単位のポゼッション率を動かす要因になる。

一方、シーズン単位でならすと、チームの大まかな傾向は見えやすくなる。後方からパスをつないで前進するチームは高くなりやすく、速攻やロングボール、守備からの切り替えを重視するチームは低くなりやすい。

ただし、低いポゼッション率は必ずしも劣勢を意味しない。堅守速攻型のチームは、相手にボールを持たせて守備ブロックを作り、奪ってから少ない手数でゴールへ向かうこと自体が明確な戦術設計になる。

率と実時間は別である

ポゼッション率は割合であり、実際に何分間ボールを持っていたかをそのまま示すものではない。

たとえば、ボールが動いていた時間が50分の試合で60%を保持した場合、実際の保持時間は30分である。一方、ボールが動いていた時間が65分の試合で60%を保持した場合、実際の保持時間は39分になる。同じ60%でも、プレーが動いていた時間が違えば、実際の保持量は変わる。

この「ボールが動いていた時間」はAPT(実効プレー時間:Actual Playing Time)と呼ばれる。APTが長い試合では、同じポゼッション率でも実際の保持時間は増える。ポゼッション率は保持の割合を示し、保持時間は保持の量を示す。両者は揃っていない場合がある。

限界と注意点

ポゼッション率は攻撃の質を示さない

ポゼッション率は、ボールを持っていた場所や、その保持がどれだけ相手ゴールに迫っていたかを示さない。長く持っていても、前進やシュートに繋がっていないケースは珍しくない。いわゆる、ボールを持たされているケースである。

攻撃の質を見るには、別の指標が必要になる。敵陣でどれだけボールを持てていたかはフィールドティルト、チャンスの質はxG、プレーの前進や危険度はxTなど、それぞれ別の指標と組み合わせて読まれる。

ゲームステートに大きく引きずられる

リードしているチームはポゼッションを下げ、ビハインドのチームは上げる傾向がある。リード側はリスクを取らず時間を消費し、ビハインド側はリスクを取って攻めに出るためである。

主要リーグの大規模なデータでは、ポゼッション率はリーグ平均で、ビハインド時に対戦相手より約4%多く、リード時に4%少なく出る傾向が示されている。

関連する指標

  • フィールドティルト — 敵陣でのパス支配率を測る指標。ピッチ全体の保持を見るポゼッション率に対し、攻撃時間の偏りを面的に捉えることで、保持の中身を補う
  • ゲームステート — リード・同点・ビハインドの状況。ポゼッション率の出方を最も大きく歪める文脈
  • APT(実効プレー時間:Actual Playing Time) — 試合中にボールが動いている時間。ポゼッション率と組み合わせることで、実際の保持時間や保持量を読み取れる
  • ポゼッション調整(PAdj) — 守備機会の差を補正する手法。タックルやインターセプトのような守備指標を、相手のポゼッション率に応じて補正する
  • xG(ゴール期待値) — シュートの質を確率で評価する指標。ポゼッション率が保持の量を測るのに対し、xGは生み出されたチャンスの質を測る
  • xT(脅威期待値) — ピッチ上の各エリアにおける保持の価値を数値化する指標。ポゼッション率が量を測るのに対し、xTは質を測る系譜にあたる

参考