PDOとは

PDOとは、自チームの枠内シュートに対する得点率と、相手の枠内シュートに対するセーブ率を足し合わせた合成指標である。得点と失点の両面から、結果に含まれる短期的な上振れ・下振れを読むために使われる。

もともとアイスホッケーの分析で生まれた指標で、考案者であるBrian Kingのオンラインハンドルネームがそのまま名称になった。略語ではない。サッカー分析には、James Graysonが2011年にプレミアリーグのデータへ適用したのが始まりとされる。

リーグ全体で見たPDOは、構造上100に固定される。各チームの値はこの100を挟んで上下に振れ、極端な値はやがて100付近へ近づいていく傾向がある。PDOが「運の指標」と呼ばれることがあるのは、この数学的な性質による。ただし測っているのは運そのものではなく、結果に表れた偏りである。偏りには運の要素も含まれるが、実力の差も混ざっている。

仕組みと読み方

計算の基本

PDOの計算式は、Shooting% と Save% の合計である。

  • PDO = Shooting% + Save%
  • Shooting% = ゴール数 ÷ 枠内シュート数 × 100
  • Save% = セーブ数 ÷ 被枠内シュート数 × 100

分母は枠内シュート(Shots on Target)。枠外シュートは含まれない。

J STATSの「シュート決定率」は分母が全シュート(枠外含む)のため、PDOの構成要素であるShooting%とは定義が異なる。両者の違いを意識しないと、PDOの値が見慣れた数字とずれて読めることがある。

たとえば、自チームの枠内シュート40本のうち12本が得点になり、被枠内シュート32本のうち失点が8本でセーブが24本だった場合、Shooting% = 30%、Save% = 75% となり、PDOは105となる。

なお、表記には複数のパターンがある。100中心はサッカー分析で広く用いられ、1000中心はホッケーで伝統的に使われる表記。小数で1.00中心とする場合もある。本記事では100中心で統一する。

100からの距離で読み、内訳に分解する

PDOが100より上のチームは、短期的に結果が内容より上振れている可能性が高い。100より下のチームは逆である。サンプルが少ないシーズン序盤では大きく振れるが、試合数を重ねるごとに100付近へ収束していく動きが見られる。

ただし、合計値だけでは要因が見えない。同じPDO 108でも、Shooting% が高いチームと、Save% が高いチームでは、偏りが起きている場所が違う。前者では攻撃側のフィニッシャーやチャンスの質、後者ではGKの能力や被シュートの質が中心になる。

PDOを読むときは、まず合計値で偏りの大きさを確認し、次に Shooting% と Save% に分解して内訳を見る。合計値は入口であり、結論ではない。

限界と注意点

PDOは結果の偏りを簡潔に捉える一方、誤読しやすい点も多い。値を読む前に踏まえておきたい点を挙げる。

シュートの質を考慮しない

PDOはすべての枠内シュートを「同じ1本」として扱う。至近距離からのシュートも、遠距離からのシュートも、計算上は等価である。シュートの距離、角度、部位、守備者やGKの位置などは、PDOには含まれない。

100付近への収束は全チームに均等ではない

優れたフィニッシャーや優れたGKを擁するチームは、長期的にも100をやや上回る水準を維持しやすい。逆に、シュートの質が構造的に低いチームや、被シュートの質が構造的に高いチームは、100を下回る水準で推移しやすい。

特にGKの影響は大きい。フィールドプレーヤーよりも出場時間が長く、シーズンを通じて同じ選手がほぼすべての被枠内シュートを受けるため、Save% への寄与が一人の選手に集中する。

「PDOは必ず100に向かって完全に回帰する」と思い込むと、こうした構造的な差を運の問題として片付けてしまうことがある。平均回帰は能力差の否定ではなく、極端な値が持続しにくいという確率的な傾向を指す。戻る先は必ずしもリーグ平均ではない。

xGが普及した時代の位置付け

PDOは、xGやxGOTが普及する前に、得点・失点の上振れを粗く見るために使われた古典的な指標である。シュートの質まで踏まえた評価が可能になった現代では、PDO単独で結論を出すよりも、xG・xGA・G-xGなどと組み合わせて読む方がよい。

PDOが結果ベースで偏りを捉えるのに対し、G-xGは期待値ベースで結果と内容のズレを捉える。視点の異なる2つを重ねれば、偏りの構造を別の角度から確認できる。

たとえば、高いPDOとプラスのG-xGが両立していれば、シュートを得点に変える効率が高い状態にある。一方、PDOは100付近でもxG差がプラスというチームは、結果に大きな振れはなくとも、チャンスの質そのもので優位に立っていると見立てられる。

ただしPDOには独自の利点もある。計算が単純で、xGモデルが整備されていないリーグやカテゴリでも算出でき、結果の偏りを直感的に把握する用途では、いまでも一定の役割がある。

関連する指標

PDOの読み方を支える指標群と、PDOを補完する指標を挙げる。

  • 平均回帰 — 極端な値が長期的に平均値へ近づいていく統計的現象。PDOはサッカーで平均回帰がもっとも分かりやすく現れる指標として知られる
  • サンプルサイズと安定性 — 枠内シュート数を分母とするPDOは、試合数が少ない段階では振れ幅が大きい。値の信頼度はサンプル量に左右される
  • xG(ゴール期待値) — シュートの質まで考慮して期待される得点を数値化する指標。PDOがすべてのシュートを等価に扱うのに対し、xGは1本ごとの危険度を区別する
  • G-xG(得点−xG差分) — 実得点とxGの差分。PDOと同じく結果と期待値の乖離を測る発想に立つが、シュートの質を分子側に取り込んでいる
  • xP(勝点期待値) — 両チームのxGから勝点の期待値を導く指標。PDOで捉える偏りを、チーム成績の最終結果(勝点)の側で表現したものと位置付けられる
  • ゲームステート — スコア状況によってシュート機会の質や量が変わるため、PDOの構成要素である Shooting%・Save% もステートに引きずられる

参考