xGA(被ゴール期待値)とは

xGA(被ゴール期待値:Expected Goals Against)は、対戦相手が放ったシュート1本ごとの得点確率(xG)を合計した値である。チームが1試合、あるいはシーズンを通じて許した「シュートの質」を数値で捉える指標であり、守備側のパフォーマンスを量ではなく質で評価する。

失点数だけを見ていても、どれだけ危険なシュートから失点したのかは分からない。30mのミドルシュートで喫した1失点と、ペナルティスポット至近からの1失点は、記録上はどちらも「1点」だが、背後にある守備の意味はまるで違う。xGAはこの違いをシュート1本ずつ評価し、合算することで、守備の仕事を「どれだけ危険な場面を許したか」という観点で測る。

計算の仕組みはxGと共通である。xGモデルは攻守の区別なく動作するため、自チームから見て打たれたシュートに対しても、距離・角度・身体部位・直前のプレーといった状況から得点確率が割り当てられる。その合計がxGAになる。別指標というより、同じxGモデルを自チームが被ったシュートに向け直したものと理解するのが近い。

「xG Against」「xG Allowed」(いずれも「許したxG」の意)と表記されることもあるが、指すものは同じである。

仕組みと読み方

xGAは一つの値だが、読み取り方は一つではない。何と比べるかによって、見えてくるものが変わってくる。

実失点との比較

3つのカードでxGAと実失点の関係を示した図。左:実失点5、xGA3.0で守備の下振れ。中央:実失点3、xGA3.0で実力どおり。右:実失点1、xGA3.0で守備の上振れ。各カードに主な要因が箇条書きで併記されている
xGAは単独ではなく、実失点と並べて読むことで初めて意味が見えてくる

実失点とxGAを並べると、「シュートの質の割に、どれだけ失点したか」が見える。

実失点がxGAを下回っていれば、シュートの質から期待されるよりも失点を抑えられていることになる。GKのセービング能力、相手の決定不振、あるいは運の上振れといった要素がここに絡む。逆に実失点がxGAを上回っていれば、「質の低いシュートを決められている」「GKが枠内シュートを止めきれていない」といった解釈に傾く。

ただしこの差分は短期的に大きく振れるため、数試合の結果だけでGKの能力や運を論じるのは難しい。長期的な傾向として読むのが前提になる。

他チームとの比較

リーグ内で相対的に低いxGAを記録しているチームは、「シュートを打たせない、あるいは質の低いシュートに抑える」側に位置していることになる。順位表や失点数には現れにくい守備の傾向を、横断的に浮かび上がらせられる点が実用的な価値である。

一方で、対戦相手の質や日程のばらつきがxGAには含まれる。対戦カードが完全に揃うわけではないため、シーズン途中の絶対値比較には注意が求められる。

xGとの差分(xGD)

xGD(Expected Goal Difference)は、xG − xGAで算出される合成指標である。攻守のバランスを一つの値で捉えたいときに用いられる。

大きくプラスであれば攻守ともに質の高いパフォーマンスを続けていることになり、マイナスであればシュートの質で相手に押されていることになる。得失点差と並べれば、実際の得失点と「チャンスの質の収支」にどれだけズレがあるかも見えてくる。

なお、xGAは選手単位ではなくチーム単位で扱われるのが一般的である。xGと同じく、PKはxGAに固定値として含まれる。PKは試合展開と無関係に与えられる場面もあるため、オープンプレーでどれだけ危険なシュートを許したかを純粋に見たい場合には、PKを除いたxGAが用いられることもある。Jリーグの公式データでも、チーム単位のxGAと、PKを除いたxGAの両方が公開されている。

限界と注意点

xGAを守備評価に使うとき、誤読しやすいパターンがいくつかある。以下の点は、値を読む前に踏まえておきたい。

GKのセーブ能力は反映されない

xGAが評価するのは「シュートが打たれるまでの状況」である。打たれた後にボールがどこに飛んだか、GKが止めたか止められなかったかは、xGAには含まれない。

同じxGAを記録した2チームでも、GKの質が違えば実失点は大きくずれる。GKの貢献を切り分けて評価したい場合には、枠内ゴール期待値(xGOT)や、そこから派生するゴール阻止数といった別の指標が用いられる。

低いxGAが必ず「優れた守備」を意味しない

自陣に深く構えて相手を押し込ませる低ブロック戦術では、相手に遠距離や鋭角からのシュートを選ばせることでxGAを抑えやすい。一方で、高い位置から積極的に奪いにいく守備戦術は、噛み合わなかった瞬間に質の高い被シュートを許しやすく、xGAが相対的に高くなる傾向がある。

xGAの値だけを見て守備の優劣を判断すると、戦術的な志向の違いを評価の差と取り違えることになる。どんな守備を志向しているかとセットで読むのが前提になる。

ボール保持率の影響を切り離せない

自チームがボールを保持している時間が長いほど、相手のシュート機会そのものが減る。xGAは加算される機会自体が少なくなるため、値は自然と低くなる。

「xGAが低い=守備組織が堅い」と「xGAが低い=ポゼッションで押し込んでいる」は、値だけからは区別できない。両者は往々にして絡み合って表れる。守備力とポゼッション力の寄与を切り分けるには、xGA単体ではなく、被シュート数や試合展開の文脈と合わせて読む必要がある。

サンプルサイズの制約

xGAはxGと同じく、1試合単位では振れ幅が大きい。被シュート数が少ない試合のxGAは、数本の決定機の有無で簡単に動く。短期間のxGAでチームの守備傾向を断定するのは、xGの場合と同じく危うい。ある程度の試合数を重ねて初めて、安定した評価が可能になる。

J STATSでは端数処理に切り捨てが適用される

J STATSにおいて、xG・xGAの端数処理には切り捨てが用いられている。標準的な四捨五入ではないため、複数試合のxGAを足し合わせる場合などでは、表示値ベースの合算と内部的な累計にわずかなずれが生じることがある。厳密な比較や計算を行う場合は、この点に留意したい。

関連する指標

xGAを起点として、関連・派生指標がいくつか存在する。

  • xG(ゴール期待値) — xGAの攻撃側にあたる指標。同じモデルを自チームのシュートに適用して算出する
  • xGD(xG−xGA差分) — 攻守のバランスを一つの指標で捉える合成値
  • xP(勝点期待値) — 両チームのxGから勝点期待値を算出する指標。xPの計算には自チームのxGに加えて相手チームのxG(自チームから見ればxGA)が必要で、守備面からチーム成績を読むときの前提にあたる
  • xGOT(枠内ゴール期待値) — シュートが打たれた後の質を評価する指標。xGAが見ていない領域を補う
  • PSxG+/-(ゴール阻止数) — GKのセービング能力を評価する指標。xGAと組み合わせることでGKの貢献を分離できる
  • ゲームステート — 試合展開によって被シュートの質と量は大きく変わる。xGAの読み取り方に不可欠な前提

参考