ゴール阻止数(PSxG+/-)とは

ゴール阻止数(PSxG+/-:Post-Shot Expected Goals +/-)は、GKが受けた枠内シュートの累積xGOTから実失点を引いた差分である。「平均的なGKが守っていたら何点失点していたか」を基準にして、そのGKが期待値からどれだけ離れているかを測る。

失点数やセーブ率は、GKの能力を示す数字として古くから使われてきた。ただし、これらの指標はGK個人の能力と、DF陣の堅さを切り分けられない。質の低いシュートしか打たせないチームのGKは、自然と失点数も少なく、セーブ率も伸びる。

ゴール阻止数は、被xGOT(受けた枠内シュート1本ごとのxGOTを合計した値)を基準に置くことでこの問題を解決する。被xGOTそのものが「平均的なGKが守っていたら何点失点していたか」の期待値であり、ここから実失点を引けば、GK個人のセービング能力に起因する差分だけが残る。この差分が、シュートが枠内に飛んできた後のセービング能力を切り出して評価する具体的な値になる。

同じ概念に複数の呼び名がある。データプロバイダーのStatsBombやFBrefでは「PSxG+/-」、Stats Perform(Opta)では「Goals Prevented」と呼ばれ、解説記事では「xGP(Expected Goals Prevented)」という表記も見かける。本記事では日本語で「ゴール阻止数」、英略称は「PSxG+/-」で統一する。

仕組みと読み方

計算と基本の読み取り方

計算式は単純である。

  • ゴール阻止数 = 被xGOT − 失点数

例えば、シーズンを通して被xGOTが40・失点が30のGKは、ゴール阻止数が+10になる。「平均的なGKであれば40失点していたであろう状況で、30失点に抑えた」と読める。

正の値であれば期待を上回る、負の値であれば期待を下回る、と直感的に読める設計になっている。値がゼロ近辺であれば、リーグ平均水準のセービング能力があると解釈できる。

なお、PKはゴール阻止数の計算から除外して扱うのが一般的である。PKは性質が他のシュートと大きく異なり、この指標の趣旨から外れるためである。

per 90と最低出場時間で正規化する

シーズン累積のゴール阻止数は、出場時間に比例して動く。出場時間が異なるGK同士を比較する場合は、per 90正規化(90分あたりに換算)と、一定の最低出場時間の足切りを組み合わせるのが一般的である。

ただし、per 90で揃えても、被シュート数の差は残る。同じ90分でも、被枠内シュートを多く受けるGKと少ないGKでは、ゴール阻止数を稼ぐ機会そのものが違う。シュートを多く受けるGKほど、絶対値の幅が大きくなる構造がある。

派生指標で被シュート数の偏りを補正する

被シュート数の差を補正するため、率や標準化指標がいくつか派生している。考え方の違いによって、複数のアプローチが並んでいる。

  • ゴール阻止率 — 被xGOT ÷ 失点数。1を超えれば期待以上、未満なら期待を下回るという読み方
  • GSAA%(Goals Saved Above Average %)/Goals Prevented Rate — 被シュート数で標準化した率指標で、被シュート量に偏りがあるGK同士を公平に比較できる。「(被xGOT − 失点数) ÷ 被シュート数」で計算する。StatsBombではGSAA%、Stats Perform(Opta)ではGoals Prevented Rateとして知られる

限界と注意点

シーズン間で大きく振れる

ゴール阻止数で正の値を出したGKが、翌シーズンには平均水準まで戻る現象は広く観察されている。シーズン単位で見ると、同じGKでも値が大きく動く。これは指標の欠陥というより、サンプルサイズが小さく、シュート1本ごとの結果に占める偶然の比重が大きいことの表れである。

ある分析によると、同じGKでもシーズン間で約 0.2 goals per 90 程度の変動幅があり、これはランダムに選んだ2人のGK間の差の85%程度に相当することが報告されている。1シーズンの数字を別のシーズンに当てはめて「次のシーズンも同じ水準が出る」と読むのは難しく、前のシーズンに大きくプラスだったGKが翌シーズンはマイナスに振れる、という入れ替わりが現実に起きる。

このため、1シーズンの数字だけで「このGKは平均以上/以下」と結論づけるのは難しく、複数シーズンを通した傾向で評価するのが前提になる。短期間の高い値が継続するとは限らないし、低い値が長期の不調を意味するとも限らない。

入力xGOTモデルの仕様で値が変わる

ゴール阻止数は被xGOTを材料にするため、xGOTモデルの仕様差がそのまま結果に反映される。とくにGK位置を変数に含めるかどうかで、プロバイダーは方針が分かれる。

含めない設計では、GKのポジショニング能力もゴール阻止数の中にまとめて評価される。GKが良い位置を取ることで被xGOT自体を下げ、結果として失点を抑えていれば、それも阻止数の上振れとして表れる。一方、含める設計では、ポジショニングの良し悪しは被xGOTの値そのものに織り込まれ、阻止数からは切り離される。後者では、GKの「シュートに対する反応・セービング技術」だけが純粋に残る。

どちらが正しいというより、何を測りたいかという目的の差である。同じGKでも、参照しているプロバイダーによって阻止数の値が違うことがあり得る。

GKの仕事はセービングだけではない

ゴール阻止数が捉えているのは、枠内に飛んできたシュートに対する反応・セービング技術の側面のみである。ビルドアップへの参加、クロスやハイボールの処理、ディフェンスラインへの指示や組織化といった役割は、この指標には含まれない。

ゴール阻止数で平均以下のGKが、ビルドアップやハイボール処理で大きな貢献をしているケースは少なくない。「ゴール阻止数の良いGK」と「総合的に良いGK」は、必ずしも同じではない。

関連する指標

ゴール阻止数を起点として、関連・派生指標がいくつか存在する。

  • xGOT(枠内ゴール期待値) — ゴール阻止数の入力値。被xGOTがあって初めてこの指標は成り立つ
  • xGA(被ゴール期待値) — 守備側のチーム指標。xGAでは見えないGKの貢献を切り分けるためにゴール阻止数が補完する
  • per 90(90分あたり) — 出場時間の異なるGK同士を比較する際の標準化単位
  • サンプルサイズと安定性 — 1シーズンの数値で評価することの危うさの背景にある統計的前提
  • 平均回帰 — 1シーズンの極端な値が次のシーズンに平均近くへ戻る統計現象。ゴール阻止数のシーズン間の振れと直結する

参考