PPDAとは

PPDA(守備アクションあたりのパス数:Passes Per Defensive Action)は、守備のプレッシング強度や積極性を測るチーム単位の指標である。

チームが相手に許したパス本数を、自チームが起こした守備アクションの数で割った比率がPPDAとなる。つまり、相手にどれだけパスを許したかを通じて、プレッシング強度や積極性を推定する。

PPDAの計算式。分子は『相手が行ったパス本数(対象エリア内)』、分母は『タックル + インターセプト + ファウル + チャレンジ(対象エリア内)』。
PPDAの計算式(Colin Trainor 2014)。分子・分母とも、対象エリア内で発生した事象に限定される。

対象エリアは、相手陣の全体に加えて、自陣の前方の一部まで(ピッチ全体の前方3/5)を含む範囲である。自陣のゴール側2/5を対象から外しているのは、最終ライン周辺の守備動作はどんなチームでも普通に行うため、ハイプレス強度を測るうえではノイズになるという考え方による。

PPDAが対象とするピッチのエリアを示した概念図。ピッチを縦に5分割し、相手ゴール側の3/5(自チームの守備方向から見て前方)が対象エリアとして強調表示されている。守備側と攻撃側の選手が向かい合って配置され、ボールは攻撃側の前方寄りに位置する。対象エリアの境界は破線で示される。
PPDAの対象エリア(Colin Trainor 2014)。分子の相手パス本数も、分母の守備アクション数も、いずれもこのエリア内の事象に限定される。

たとえば、相手のパス60本に対して10回の守備アクションを起こしたチームのPPDAは6.0、相手のパス150本に対して10回の守備アクションを起こしたチームのPPDAは15.0となる。前者の方が、より積極的に守備アクションを起こしていることになる。

強プレッシング型のチームほど、PPDAは低い値になる。逆に、ミドルブロックやローブロックで構える時間が長いチームは、対象エリア内での守備アクションが少なくなりやすく、PPDAは高く出やすい。

PPDAは2014年、Colin TrainorがStatsBombのブログに発表した記事で広く知られるようになった。その後、複数のデータプロバイダーが「相手パス数 ÷ 守備アクション数」という基本発想をもとに、各社の定義でPPDAを提供している。Jリーグ公式サイトのスタッツページ(J STATS)には、2026年時点でPPDAは公開されていない。

仕組みと読み方

チーム単位で読む

PPDAはチーム単位の指標として設計されている。シーズン累積で見ると、チームのプレッシング哲学が比較的安定して数値に表れる。

主要5大リーグでは、シーズン平均PPDAが11前後となる集計が多い。強プレッシング型のチームは7前後、リトリート型のチームは17〜18前後といった分布が見られる。ただし、リーグやシーズン、プロバイダーによって相場は変動する。絶対水準よりも、同じデータ源での相対比較で読むのが基本となる。

単発の試合では振れ幅が大きい。試合ごとのPPDAは相手のスタイルや序盤の展開に左右されやすく、シーズン累積で読むのがノイズを抑える基本姿勢になる。

試合内の変化を読む

前後半や時間帯ごとに区切ったPPDAを並べると、試合中のプレス強度の推移が見えてくる。

先制した側がリードを守るためにプレスを緩めるとPPDAは上がる。ビハインドの側が同点を狙ってプレスを強めるとPPDAは下がる。こうした試合内の振れは、ゲームステートと組み合わせて読むのが自然である。

限界と注意点

プロバイダーごとに定義が異なる

PPDAの基本形はColin Trainor(2014)の原典に基づくが、実装の細部はプロバイダーで揺れる。

対象エリアは、原典やWyscoutでは「ピッチ前方3/5」に相当する範囲が用いられる。一方、Opta Analystは「プレス側の自陣ディフェンシブ・サードを除いたエリア」(ピッチ全体の約2/3)と説明している。境界の取り方はプロバイダーによって異なる。

守備アクションは、原典がタックル・インターセプト・ファウル・チャレンジ(失敗したタックル試行)の4要素を基本とする。Opta Analystはこれにパスブロックを加えた5要素を、Wyscoutはタックル・チャレンジに代えて「勝った守備デュエル」と「スライディングタックル」を採用するなど、各社で構成が異なる。

異なる出典のPPDAを並べて比較する際は、定義を揃えるか、揃わないことを認識して読む必要がある。

ただ、プロバイダーごとの違いは、各社が最適と判断した設計の結果でもある。同じ発想はチーム単位でも応用でき、戦術的特徴やリーグ環境に合わせて対象エリアや守備アクションの定義を調整すれば、標準形よりも自分たちのスタイルを反映させた指標として使うことができる。

プレスの「成功度」は測らない

PPDAの守備アクションには、ボールを奪取できたかどうかを問わないものが含まれる。極端に言えば、プレスのたびにかわされて毎回失点しているチームでも、守備アクションの数が多ければPPDAは低くなる。

設計上、PPDAは「プレスの積極性と頻度」を測る指標であり、「プレスの結果」を測る指標ではない。ボール奪取の成果やトランジションへの繋がりは、別の指標と組み合わせて読む必要がある。

敵陣支配で歪む

PPDAの弱点は、ボール保持で相手陣に深く侵入し続けるチームほど、自然とPPDAの数値が低くなりやすいことにある。守備アクションが高い位置で発生する機会が増えるため、プレッシング志向と敵陣支配の結果が分離しにくくなる。

強豪リーグの首位クラスのチームがPPDAランキングの上位に並ぶ現象は、ハイプレス志向だけが理由とは限らない。敵陣でのパス支配率と高い相関を持つことが指摘されており、両者を並べて見ることで、純粋なプレス強度と敵陣支配の影響を区別しやすくなる。

プレスの構造を捉えない

PPDAはオンボール(ボール周辺)のイベントしかカウントしない。組織的なプレスの大部分は数値に現れない。パスコース遮断、後方の連動した押し上げ、囮の動きは、PPDAの計算には入らない。

たとえば、1人がアグレッシブに突っ込む散発的なプレスと、チーム全体が連動した組織的なプレスを、PPDAは同じ値として扱う。プレスの「形」を捉えるには、トラッキングデータを用いた指標(ボールキャリアから一定距離内の守備者数を測る等)と組み合わせて読む方法がある。

関連する指標

  • タックル(Tackles) — PPDAの分母を構成する基本守備アクション。位置による意味の違いはタックル単独で読むときも重要
  • インターセプト — タックルと並ぶ分母の構成要素。能動的にパスコースに入る守備
  • フィールドティルト — 敵陣でのパス支配率を測る。PPDAと相関しやすく、敵陣支配と純粋なプレス強度を切り分けるために併読が有効
  • ゲームステート — スコア状況によってプレス強度の出方が変わる。試合内のPPDA変化はゲームステートと合わせて読む
  • パッキング — 守備アクションによる相手選手通過数(Removed Opponents)はPPDAと発想が近い。プレスの強度と効果を別軸で捉える組み合わせ
  • イベントデータ vs トラッキングデータ — PPDAはイベントデータだけで計算できる利点を持つ。一方、組織的プレスの構造はトラッキングデータでないと捉えきれないという限界の前提理解

参考