プログレッシブパスとは

プログレッシブパス(Progressive Passes)は、ゴール方向に一定以上前進させた成功パスを指す指標である。

パス数やパス成功率は、基本スタッツとして広く使われている。ただし、これらの指標は「前進したかどうか」を見ていない。鋭い縦パスも、自陣でのゆるやかな横パスも、成功すれば等しく1本として数えられる。実際にボールを効果的に前に運べているかは、数字だけでは読み取れない面がある。

パスの向きに着目した考え方として、ゴール方向に出された成功パスだけを切り出す「前方パス(forward pass)」がある。ただし前方パスは方向のみを条件にしており、1mの前進も30mの前進も等しく1本として扱われてしまう。

プログレッシブパスは、前進量に一定の基準を設けることで、「ボールを本当に前に運んだパス」だけを抽出する仕組みである。距離と方向の条件だけで、機械的に判定される。

ピッチ上で、プログレッシブパスとして判定されるパスと判定されないパスを対比した概念図。前進の基準を満たすパスと満たさないパスを矢印と記号で示している
プログレッシブパスは「一定の前進量」を満たす成功パスだけを抽出する

仕組みと読み方

計算の基本

プログレッシブパスの判定基準は、絶対距離を基準にする系統(例:何メートル以上の前進)と、ゴールまでの残り距離に対する割合を基準にする系統がある。後者では、自陣からのパスほど長い絶対距離が必要になり、敵陣からのパスほど短い距離で条件を満たす設計になる。

これとは別に、自陣から出したパスを特別に扱う設計も多い。集計の対象から自陣を丸ごと外すか、自陣では基準を厳しくするかである。ゴールキックのような大きなキックが、距離が長いというだけで数えられるのを避ける狙いがある。

対象となるのはオープンプレーのパスが中心だが、セットプレーを含めるかどうかもプロバイダーで分かれる。

チーム単位・選手単位で読み取る

チームのプログレッシブパス数は、ビルドアップでどれだけボールを前に運べているかの目安になる。特にCBやボランチのプログレッシブパス数は、最後方からの組み立てスタイルを映しやすい。

選手単位では、スカウティングで使われる。per 90正規化と組み合わせて、ポジションが近い選手同士で比較するのが基本的な読み方になる。

もうひとつ、ポゼッション率の影響もある。ポゼッション率が高いチームはそもそも全体のパス総数が多く、プログレッシブパスの絶対数も自然と押し上げられる。高い数字だけで「前進力が高い」と断じるのは早く、per 90や、パス総数に対する割合と合わせて読むのが望ましい。

限界と注意点

前進の「結果」は評価しない

条件を満たすパスが通れば、その直後にボールを失っても、チャンスに繋がらなくても、1本のプログレッシブパスとしてカウントされる。プログレッシブパスが測っているのは「ボールが前に動いた事実」までで、その前進が実際の得点機会や勝点にどれだけ寄与したかは、この指標だけでは見えない。

得点確率で重み付けするxA、エリア価値の変化で測るxT、通過した相手選手数を数えるパッキングなど、評価軸の異なる指標と組み合わせることで、前進の「量」と「質」の両面がより見えてくる。

「前進量」と「前進の質」は別

距離の基準は、同じ15mの前進でも「自陣から」と「敵陣から」で価値が違うという非対称性を反映できない。得点確率に直結するのは、ゴールに近いエリアでの小さな前進であることが多い。プログレッシブパス数が多いチームでも、その中身がロングボール主体なのか、細かい前進を積み重ねた結果なのかは、数字だけでは分からない。

この非対称性を埋めるのが、エリアごとの価値や通過した相手選手数といった、別の評価軸を持つ指標である。距離は前進を測る一つの軸でしかなく、エリアや人数の軸を持つ指標を併せて読むと、同じ前進でも価値の重みが見えてくる。

参考