プログレッシブキャリーとは

プログレッシブキャリー(Progressive Carries)は、ボールを保持したまま一定以上前進した持ち運びを切り出す指標である。

ドリブルが「相手を抜く・かわすプレー」を対象とするのに対し、プログレッシブキャリーは相手を抜いたかどうかを問わず、ボール保持中の前進そのものを取り出す。CBが相手のプレッシャーを受けない空間をそのまま持ち上がる動きや、ウイングが空いたサイドのスペースを駆け抜ける動きは、ドリブルとしてはカウントされにくいが、プログレッシブキャリーには含まれうる。

プログレッシブパスが「パスによる前進」を見るのに対し、プログレッシブキャリーは「保持したままの前進」を見る。どちらもボール前進の指標だが、前者は味方へのパスによるボール移動、後者はボール保持者自身の移動である。

仕組みと読み方

計算の基本

プログレッシブキャリーかどうかは、キャリーの開始地点と終了地点(次のパスやシュート、ボールロストなど)の距離と方向が、一定の基準を超えるかで決まる。

判定基準の設計はデータプロバイダーで異なる。代表的なプロバイダーの扱いを並べると、考え方の幅が見える。

プロバイダー名称距離・方向の条件
OptaProgressive Carries相手ゴール方向に5mを超えて前進
StatsBombProgressive Carriesゴール中心までの残り距離の25%以上を前進
WyscoutProgressive Run起点と終点が自陣同士なら30m以上、ハーフウェーラインを跨ぐなら15m以上、敵陣同士なら10m以上ゴール方向に前進

共通しているのは「ボールを持ったまま前へ進んだ」という捉え方である。一方で、何メートル進めばカウントするか、どの方向を前進と見なすか、自陣からの単純なロングキャリーを抑える条件を置くかどうかは、プロバイダーで変わる。

ドリブルとプログレッシブキャリーの違い

ドリブルは、相手を抜く・かわすために仕掛けるプレーである。相手選手との1対1の要素を含むことが多く、デュエルに近い性質を持つ。

一方、キャリーは相手を抜いたかどうかにかかわらず、ボールを保持して移動したプレーを指す。相手と直接対峙しない持ち運びもキャリーに含まれる。たとえば、CBが空いたスペースへ数m持ち出すプレーや、SBがタッチライン沿いにボールを運ぶプレーも、定義を満たせばキャリーとして扱われる。

ドリブル、キャリー、プログレッシブキャリーの関係は、次のように整理できる。

  • ドリブル:相手を抜く、またはかわそうとする仕掛け
  • キャリー:ボールを保持したまま移動するプレー
  • プログレッシブキャリー:キャリーのうち、相手ゴール方向への前進量が一定以上あるもの

チーム単位・選手単位で読み取る

チームのプログレッシブキャリー数は、ビルドアップでどの手段を使って前進しているかの目安になる。プログレッシブパスとの比率を取れば、パスで運ぶスタイルとキャリーで運ぶスタイルの違いが浮かび上がる。

プログレッシブキャリーが多くなる選手の傾向は、ポジションごとに異なる動き方を反映する。最終ラインからボールを運ぶCB、サイドで縦突破を仕掛けるウイングやSB、ライン間でボールを受けて持ち出す中盤の選手など、それぞれの役割に応じた前進の形が値に表れる。逆に、相手と密接した状況でプレーする時間が長いポジションでは、距離条件を満たすキャリーが起きにくい場合もある。

限界と注意点

前進の「結果」も「質」も評価しない

プログレッシブキャリーは、ボールが前へ進んだ事実を数える指標である。その後にシュートへ繋がったか、チャンスになったか、相手守備をどれだけ崩したかまでは直接評価しない。

たとえば、長い距離を運んだものの、最後に詰まってバックパスを選ばざるをえなくなったプレーも、定義を満たせばカウントされる。逆に、短い持ち出しで相手を大きく引きつけ、味方に有利な状況を作ったプレーは、前進距離が足りなければカウントされない。

同じ15mの前進でも、自陣でのキャリーと敵陣でのキャリーで価値は違う。距離の基準だけでは、この差は数字に表れない。xT、パッキング、PA進入数など、評価軸の異なる指標と組み合わせることで、前進の量と質の両面が見えてくる。

相手の出方次第で増減する

プログレッシブキャリー数は、対戦相手の守備の組み方からも影響を受ける。相手が前から強く制限しない試合では、CBや中盤の選手が前方の空間へ持ち上がる場面が増えやすい。一方、中央や敵陣のスペースを狭く閉じられると、ボールを保持していても距離条件を満たす前進は起きにくくなる。

プログレッシブキャリー数が多い選手やチームを見て、即座に個の打開力やビルドアップ能力が高いと結びつけるのは早い。

参考