デュエルとは

デュエル(duel)とは、1対1の競り合いに関する指標群である。

日本サッカーで広く使われるようになったきっかけは、2015年から3年間にわたり日本代表を率いたハリルホジッチ監督が、球際の重要性を「デュエル」という言葉で強調したことにある。それ以降、日本のサッカーメディアでも目にする機会が増えた。

デュエルには地上戦・空中戦・ルーズボール争奪などのサブ分類が含まれる。守備カテゴリに分類されることが多いが、ボール保持側のドリブル突破もデュエルに含まれ、攻守の両面にまたがることもある。何をデュエルに含めるかはデータプロバイダーごとに異なり、その違いの幅も大きい。

このため、デュエルは数字を見るときにとくに注意が必要な指標となっている。

仕組みと読み方

タイプの分類

デュエルは主に3つの局面に分類される。

  • 地上戦(ground duel) — 足元での競り合い。タックルの応酬、ショルダーチャージ、ボール保持者と奪取側のドリブル攻防など、ボールが地上にある状態での1対1が広く含まれる。試合中に幅広く発生するタイプである
  • 空中戦(aerial duel) — ボールが空中にある状態での競り合いで、多くはヘディングで決着がつく。ロングボールやクロスへの対応、セットプレーでの守備など、地上戦とは別の身体能力が求められる局面で発生する
  • ルーズボール争奪(loose ball duel/50-50) — どちらの選手もボールを保持していない、対等な状態での争奪。ボールが弾んだ瞬間や、競り合いのこぼれ球を拾い合う場面が典型例である

地上戦をさらに「攻撃的デュエル(offensive:ボール保持側)」と「守備的デュエル(defensive:奪取側)」に細分化するデータプロバイダーもある。

プロバイダーごとの定義差

デュエルは指標名が共通でも、何を集計範囲に含めるかがプロバイダーごとに大きく異なる。主要プロバイダーの定義を整理すると、次のとおりである。

プロバイダーデュエルの定義集計範囲
Opta試合中の対戦選手2人による50対50の競り合い空中戦、地上戦のタックル攻防、テイクオン攻防、ファウル絡みを含む広い設計
StatsBomb試合中の対戦選手2人による50対50の競り合い空中戦の敗者側とタックルを傘下に持ち、ルーズボール争奪は別イベントとして独立
Wyscoutボールの支配・前進・方向転換のために2人の選手が競う場面攻撃的・守備的・ルーズボール・空中戦の4サブタイプ
J STATS空中戦を除く1対1での勝利総数で、ドリブルで抜いた回数+タックル数をカウントドリブルで抜いた回数とタックル数のみ。空中戦は「空中戦勝利数」として独立した別項目

※各プロバイダーの公式定義の出典は参考セクションを参照

J STATSの設計は他のプロバイダーと質的に異なる。欧州系の主要プロバイダーは空中戦・地上戦・ルーズボール争奪などをデュエルの傘下に束ねる広い設計を採るのに対し、J STATSは空中戦を除外し、ドリブルで抜いた回数とタックル数の2要素のみを合算する狭い設計である。

勝敗の判定基準

勝敗の判定は、デュエルの種類によって基準が異なる。

空中戦では、最初にボールに触れた選手が勝者として記録される。ただしこの基準は、最終的にどちらのチームがボールを保持したかとは必ずしも一致しない。先に触れたが直後にこぼれて相手チームに渡った場合でも、勝者として記録される。

地上戦では、判定がより複雑である。プロバイダーによって基準は異なるが、攻撃側の前進を止められたか、ボール保持の動きが進展したか、ファウルが発生したかといった条件で判定される。

ファウルが絡んだ場合は、ファウルを獲得した選手を勝者、犯した選手を敗者として扱うプロバイダーが多い。

読み取り方の留意点

デュエル指標を読むときに踏まえておくべき構造的な前提が、いくつかある。

  • 空中戦と地上戦は別のスキル — 同じ選手でも、空中戦の勝率と地上戦の勝率は一致するとは限らない。両者を合算した「総合勝率」は2つの異なる特性を平均化するため、選手の能力を読むときはタイプを分けて見る
  • 勝率は対戦相手の質を反映しない — 強い相手と多く争った選手の勝率は、弱い相手と争ってきた選手より低く出やすい。単純な勝率では、ボール争奪の能力差と機会の質の差が混ざる
  • ポゼッション率の影響 — タックル攻防のように守備側として発生するデュエルは、ボールを持たないチームほど発生回数が増えやすい。チーム単位で守備系デュエルの数を比較する場合、ポゼッション率の差が結果に影響する

最後の点に対しては、ポゼッション調整(PAdj:Possession-Adjusted)と呼ばれる補正手法と組み合わせて読む方法が知られている。

関連する指標

デュエルを起点に、内訳・補完・派生の関係にある指標がいくつか存在する。

  • タックル(Tackles) — 地上戦の主要な構成要素。デュエルの内訳の一部として記録される
  • インターセプト(Interceptions) — 競り合いを伴わない守備アクション。デュエルとは奪い方の構造が異なる
  • 空中戦勝率 — デュエルから独立して扱われる派生指標。J STATSでも、選手スタッツとして独立した項目で一般公開されている
  • ドリブル成功率 — 攻撃的デュエルの結果と密接に対応する
  • PPDA(守備アクションあたりのパス数) — プレッシング強度を測るチーム単位の指標。守備アクション数(タックルを含む)を分母に持つ
  • ポゼッション調整(PAdj) — 守備機会の差を補正する手法。チーム保持率の影響を補正する目的で、デュエル数やタックル数に適用される

参考