フィールドティルトとは

フィールドティルト(Field Tilt)は、両チームがアタッキングサードで行ったパスのうち、自チームが占めた割合を示すチーム指標である。

一般的なポゼッション率は、ピッチ全体でどちらのチームが多くボールを保持していたかを見る。自陣での保持も、中盤での保持も、相手陣深くでの保持も、同じボール保持として扱われる。一方、フィールドティルトは対象エリアを相手ゴールに近いエリアに絞る。つまり、「ボールを持っていたか」ではなく、「どのエリアでボールを動かしていたか」を見る指標である。

両チームの比率として算出するため、50%が中立となる。50%を上回るほど自チームが相手ゴールに近いエリアで多くボールを動かしていたことを示し、下回るほど押し込まれていたことを示す。50%を大きく上回るような数値は、相手をピッチの深い位置まで押し込んでいた展開と読める。

Jリーグ公式サイトのスタッツページ(J STATS)には、2026年時点でフィールドティルトは公開されていない。

ピッチ全体図。攻撃方向は右方向で、自チームのアタッキングサード(ピッチ右端の1/3)がハイライトされており、フィールドティルトの対象エリアであることを示している。
フィールドティルトは、ピッチ全体の保持ではなく、相手ゴールに近いアタッキングサードでのパスに対象を絞る。

仕組みと読み方

計算の基本

フィールドティルトは、次の式で表される。

  • フィールドティルト = 自チームのアタッキングサードでのパス数 ÷ 両チームのアタッキングサードでのパス数の合計 × 100

たとえば、自チームがアタッキングサードで70本、相手チームが30本のパスを行った場合、フィールドティルトは70%となる。一方が70%なら、もう一方は30%である。

比率指標であるため、絶対量の違いは数値に現れない。同じ70%でも、両チーム合計が100本の試合と50本の試合では、ピッチでの試合の様相は大きく異なる。フィールドティルトは「どちらが押し込んでいたか」を示すが、「どれだけの密度でプレーしていたか」までは扱わない。

プロバイダーごとに実装が異なる

フィールドティルトはイベントデータから派生する指標で、プロバイダーや分析者によって細部の実装が異なる。たとえば公開資料で定義を確認できる2つのプロバイダーを並べると、対象エリアと対象イベントの組み合わせに違いがある。

プロバイダー対象イベント対象エリア
Stats Performパスアタッキングサード
Driblabパス+タッチ最後の35メートル

試合単位と累積単位

試合単位のフィールドティルトは、相手の戦い方や試合展開に左右されやすく、振れ幅が大きい。一方、複数試合の累積で見ると、チームが相手陣でどれだけ長く攻撃を組み立てる傾向にあるかが、比較的安定して数値に表れる。

相手を押し込みながら攻撃を組み立てるチームは、長期的に高い数値を記録しやすい。逆に、自陣でブロックを作り、奪った後に少ない手数で前進するチームは、攻撃の効率が高くても数値は低く出やすい。

そのため、フィールドティルトは単発の試合評価よりも、チームのプレースタイルや試合の流れを読む補助指標として使うのが自然である。

限界と注意点

場所は測るが、質は測らない

フィールドティルトが高いことは、相手ゴールに近いエリアで多くボールを動かしていたことを示す。ただし、それだけで攻撃の質が高かったとは言えない。

アタッキングサードで横パスを続けても、相手の守備ブロックを崩せていなければ、シュートや高いxGにはつながらない。逆に、フィールドティルトが低いチームでも、少ない攻撃機会から高い質のチャンスを作ることはある。攻撃の質まで見る場合は、xG、PA進入数、xTなどと組み合わせる必要がある。

速い攻撃は数値に反映されにくい

フィールドティルトは、相手陣深くでのパス量をもとにする。そのため、ショートカウンターやロングカウンターのように、少ない手数でゴール前まで進む攻撃は数値に反映されにくい。

フィールドティルトは持続的に押し込む攻撃には反応しやすいが、縦に速く進む攻撃、相手の背後を一気に取る攻撃、セットプレーからのチャンスには反応しにくい。低いフィールドティルトを単純に「攻撃できていない」と読むのは危うい。チームが選んでいる攻撃の形を踏まえて読む必要がある。

ゲームステートの影響を受ける

フィールドティルトはゲームステートの影響を受ける。早い時間に先制したチームが守備に回り、追いかけるチームが相手陣に押し込む展開になれば、フィールドティルトはビハインド側に寄ることがある。

この場合、数値の高さは、必ずしも試合全体の優位性を意味しない。相手がリードを守るために意図的にスペースを渡している可能性もある。とくに試合終盤の数値を見る場合は、スコア、時間帯、退場者の有無と合わせて読む必要がある。

関連する指標

  • ポゼッション率 — ピッチ全体でどちらが多くボールを持ったかを示す。フィールドティルトは、その保持がどのエリアで起きたかを補う
  • PPDA(守備アクションあたりのパス数) — プレッシングの強度を測る指標。相手陣で長くプレーするチームは守備アクションも高い位置で発生しやすく、フィールドティルトと組み合わせて読むことで、純粋なプレス強度と敵陣支配を切り分けやすくなる
  • ゲームステート — リード・同点・ビハインドの状況。フィールドティルトの数値を読むうえでの前提になる
  • ファイナルサード進入・PA進入 — 相手陣の深いエリアへ到達した回数を見る指標群。フィールドティルトが滞在量に近いものを見るのに対し、進入は到達回数を見る
  • xG(ゴール期待値) — シュートの質を確率で評価する指標。フィールドティルトが相手陣でのパス量を見るのに対し、xGはチャンスの質を見る
  • xT(脅威期待値) — ピッチ上の各エリアにおける保持の価値を数値化する指標。フィールドティルトより一段細かく、どのエリアの保持や前進がどれだけ危険かを扱う

参考