ファイナルサード進入・PA進入とは
ファイナルサード進入・PA進入(Final Third Entries / Penalty Area Entries)とは、ボールが相手陣の深いエリアへ到達した回数を数える指標群である。
ファイナルサードは、ピッチを縦に3分割したときの相手ゴール側の3分の1を指す。PAはペナルティーエリアの略であり、ゴール前のより限定されたエリアである。ファイナルサード進入は「相手陣深くまで運べた回数」、PA進入は「ゴール前の危険なエリアまで入れた回数」を見る指標と整理できる。
ここでいう「進入」は、必ずしもパスだけを意味しない。データプロバイダーによって、パスだけを数える場合もあれば、ドリブルやキャリーによる持ち運びを含める場合もある。多くの定義では、単にボールがエリア内へ入るだけでなく、攻撃側が次にプレーできた段階で1回として数える設計になっている。
Jリーグ公式サイトのスタッツページ(J STATS)には、2026年時点でファイナルサード進入・PA進入は公開されていない。
仕組みと読み方
進入が成立する条件
ファイナルサード進入・PA進入の基本は、対象エリアの外から内へ、攻撃側がプレーできる形でボールを進めた回数を見ることである。具体的には、次のタッチが味方であること、対象エリアの内側で味方選手がプレーできたこと、といった味方の関与を条件に置く定義が多い。
ファイナルサード進入とPA進入の段階差
ファイナルサード進入とPA進入は、どこまで運べたかを2つの段階で見る指標として読める。
両者の絶対数だけでなく、ファイナルサード進入とPA進入を並べて見ると、相手陣に到達してからゴール前までの進み具合が見えやすくなる。ファイナルサードまで到達しても、その先のPAまでは届きにくいチームと、ファイナルサードに入ったら高い割合でPAまで運べるチームでは、攻撃の質的特徴が異なる。
たとえばファイナルサード進入が多いのにPA進入が少ない試合は、相手陣に押し込めているがゴール前までは運べていない状況だと読める。逆に、ファイナルサード進入の絶対数は多くなくても、その何割かがPA進入につながっているチームは、少ない手数でゴール前まで運べている可能性がある。
限界と注意点
到達後の質は測らない
ファイナルサード進入とPA進入は、ボールがそのエリアに届いた回数を数える指標である。届いた後にチャンスとして成立したか、シュートにつながったか、xGの高い決定機を作れたかまでは直接評価しない。
サイドからPAに入っただけのパスと、PA内で相手GKと一対一となるスルーパスは、進入としてはどちらも1回として扱われる。攻撃の質を見るには、xGやxAなどの別軸の指標と組み合わせる必要がある。
戦術スタイルとゲーム展開の影響を受ける
進入数の絶対量はチームのボール保持量や攻撃回数の影響を受ける。長くボールを持つチームは、ファイナルサード進入もPA進入も数値が増えやすい。自陣で構えてカウンターを狙うチームは、保持回数が少ないため絶対数は控えめに出やすい。
リードしているチームは前進を急がず、ビハインドのチームはリスクを取って前へ運ぼうとするといった展開の偏りも数値に反映される。試合の文脈やチームのスタイルを踏まえずに絶対数だけを並べると、ポゼッション量に引きずられた読み方になりやすい。
関連する指標
ファイナルサード進入・PA進入を起点として、関連・派生指標がいくつか存在する。
- プログレッシブパス — パスの前進量を距離で評価する指標。プログレッシブパスが「どれだけ前進したか」を見るのに対し、ファイナルサード進入・PA進入は「どこに到達したか」を見る別アプローチ
- プログレッシブキャリー — ボールを持ち運んで前進した動きを距離で評価する指標。PA進入にはキャリーを含む定義もあり、両者を組み合わせて前進の手段を立体的に読む方法もある
- xT(脅威期待値) — 前進をエリア価値で評価する指標。ファイナルサード進入・PA進入が到達回数を見るのに対し、xTは到達した位置の価値を確率的に評価する
- フィールドティルト — アタッキングサードでのパス比率で攻撃時間の偏りを面的に捉える指標。フィールドティルトが滞在量に近いものを見るのに対し、ファイナルサード進入・PA進入は到達回数を見る
- xG(ゴール期待値) — シュートの質を確率で評価する指標。PA進入後にどれだけ質の高いシュートにつながったかを併せて読むことで、進入数の解釈が補強される
- PA内タッチ — PA内での触球回数を見る隣接指標。PA進入が「外から内へ入った回数」を数えるのに対し、PA内タッチは「PA内でボールに触れた回数」を数える
参考
- Ruiz-Ruiz et al. Analysis of entries into the penalty area as a performance indicator in soccer (2013)
- Ali Tweedale “Possession and Territory, but Too Few Chances Created: Tottenham’s Final-Third Problems Analysed” (Opta Analyst, 2024) https://theanalyst.com/articles/tottenham-problems-chances-created
- “Final third entries” (FIFA Training Centre, 2022) https://www.fifatrainingcentre.com/en/fwc2022/efi-metrics/efi-metric—final-third-entries.php
- “Pass into final third” (Wyscout Glossary) https://dataglossary.wyscout.com/pass_to_final_third/
- “Pass into penalty area” (Wyscout Glossary) https://dataglossary.wyscout.com/pass_to_penalty_area/