クロスとは

クロス(Cross)は、サイドから相手ゴール前の味方に向けて送るパスである。

日本ではセンタリングとも呼ばれてきたが、これは和製英語にあたる。JFAも国際的な用語との統一を図る方針を示しており、現在は中継やメディアでも「クロス」が主流になっている。

攻撃をする際、サイドからゴール前にボールを送り、味方にシュートを打たせる。古くからサイド攻撃の中心にあるプレーで、データ分析でもクロスは基本的な集計項目として扱われてきた。

仕組みと読み方

集計の仕組み

クロスの計測は、試行数と成功数のカウントで構成される。クロス成功率は成功数を試行数で割った値である。成功の判定は、基本的にパス後のタッチが味方選手かどうかで行われる。ただし、詳細はデータプロバイダーによって異なり、成功率の数値にも差が出る。

データプロバイダーごとの定義差

主要プロバイダーの定義は次のとおりである。

プロバイダークロスの定義集計範囲
Optaサイドからゴール前の中央エリアにいる味方を狙うボール。サイドからより中央へという横方向の移動要素が必要オープンプレー・コーナー・フリーキックを含む総数と、セットプレーを除いた派生を併せて提供
Wyscout攻撃側のサイドから、相手ゴール前のエリアにいる味方を狙うボールオープンプレーのみ。コーナーやフリーキックは含まない。次のタッチが味方の場合を成功とする
J STATS相手陣ペナルティーエリア内の味方選手にシュートを打たせる狙いがあり、オープンプレーにおいてキックによりサイドから送られたパスオープンプレーのみ。コーナーキックは独立した別項目として集計

※各プロバイダーの公式定義の出典は参考セクションを参照

種類と分類の扱い

クロスは、出す位置によって性質が大きく異なる。データ分析ではゾーンを分割して扱うことも多い。

サッカーピッチ全体図。攻撃方向は右向き。攻撃側のサイドに3つのクロス供給エリアが示されている。Aはアーリークロスとして攻撃側ペナルティーエリアの手前のサイドエリア、BはPA横からのクロス、Cはペナルティーエリア内のサイド側深く(ポケットからのクロス)。3つのエリアから、ゴール前のターゲットへ向けてそれぞれ矢印が描かれている
クロスは出す位置によって意味合いが変わってくる

サイドの深い位置、PA横まで進入してから蹴るのが標準的なクロスである。これより手前から供給するアーリークロスは、守備が整う前にゴール前へ送り込むのが狙いになる。ポケット(ハーフスペースの深い位置)からマイナスに折り返すクロスも、近年では戦術的に狙うチームが増えている。

マイナスのクロスは、プロバイダーによってクロスの集計に含まれない場合がある。Optaの公式定義では、PA内でゴールラインに到達した選手が後方へ折り返したパスは「プルバック」として集計し、クロスからは除外すると明示されている。

クロスには高低の違いもある。浮き球で送るハイクロスと、低い弾道で速く届けるグラウンダーのクロスでは、受け手の体勢や競り合いの状況が変わる。

限界と注意点

成功はシュートやゴールに直結しない

一般的にクロスの成功判定は、味方に届いたかどうかだけを見ている。シュートを打てたか、ゴールを奪えたかは問わない。

そもそもクロスはゴール前の混戦エリアに送り込むため、味方に届く確率自体が低く、届いたとしても難易度の高いシュートになりやすい。こうした構造もあり、単純なクロスからは得点になりにくい傾向が、データ分析で報告されてきた。

この知見が広まったことで、PA外からではなく、得点に結びつきやすい位置(PA内のハーフスペース)からのクロスを優先し、受け手の進入も工夫する戦術が多く見られるようになった。

クロスの評価には受け手の状況も関わる

クロスは、出し手だけで完結するプレーではない。受け手の動き出し、競り合いの強さ、ゴール前に入る人数、DFとの位置関係などが結果に大きく関わる。

同じ軌道のクロスでも、PA内にターゲットが1人しかいない場合と、複数人がニア・中央・ファーに入っている場合では、成功しやすさが変わる。クロス成功率だけでは、こうしたゴール前の進入・配置までは十分に見えない。

クロス数は攻撃の良し悪しをそのまま示さない

クロスが多いチームを、単純にサイド攻撃が優れているチームと見ることはできない。

クロス数の多さは、サイド攻撃の積極性を示すこともあれば、中央を閉じられて外へ追いやられている状況を示すこともある。また、負けているチームほどクロスを多用するというデータもあり、試合展開や戦術によってもクロスの意味合いは大きく変わる。

関連する指標

  • xA(アシスト期待値) — パスがアシストになる確率を評価する指標。クロスの量だけでなく質を確率で評価するための軸になる
  • キーパス — シュートに直結したパスを数える指標。クロスがキーパスとして記録されるかどうかは、受け手がシュートを打ったかに依存する
  • チャンスクリエイト — シュートに繋がる機会を数える合成指標。J STATSの「チャンスクリエイト総数」では、PA内からのクロス成功が構成要素の一つとして組み込まれている
  • プログレッシブパス — 前進量でパスを切り出す指標。クロスとは評価軸が異なり、組み合わせるとサイド攻撃の質と量が立体的に見える
  • ファイナルサード進入・PA進入 — ボールが相手陣の深いエリアへ到達した回数を数える指標群。クロスはPA到達の手段の一つで、攻撃の到達度を見る文脈で論じられることがある

参考