空中戦とは
空中戦とは、空中にあるボールをめぐって、相手チームの選手と競り合うプレーである。
代表的なのは、前線に送られたロングボール、ゴール前に入ったクロス、CKやFKの場面で起こる空中戦であり、攻めているときにも守っているときにも生じる。
前提条件になるのは、競り合いがあったかどうかである。たとえば、ジャンプしてヘディングをしても、相手と競っていなければ空中戦として記録されない。
定義と読み方
何を空中戦として数えるか
主要なデータプロバイダーはいずれも、空中のボールをめぐる競り合いを対象としている。分かれるのは、競り合いが成立したと見なす条件と、勝ち負けの数え方である。
| プロバイダー | 空中戦の定義 | 勝ち負けの数え方 |
|---|---|---|
| Opta | 2人の選手が互いに空中で競り合う場面 | 勝ちと負けを対にして数える。3人以上が競っても、記録されるのは1組だけ |
| StatsBomb | デュエルの一種として、空中のボールを競る場面を扱う | 負けはデュエルとして、勝ちは結果として行われたプレーに記録する |
| Wyscout | 対戦する両チームの2人以上の選手が、ボールを競うためにジャンプする場面 | 勝ちと負けを対にして数える。3人以上が競った場合は、記録が複数になる |
| J STATS | 浮いているボールに対し、両チームの選手が空中で競り合うプレー | 勝利数と勝率を公開し、デュエル勝利総数には含めない |
※Opta・StatsBomb・Wyscoutの公式定義の出典は参考セクションを参照。J STATSの定義はJリーグ公式サイトのスタッツページによる
空中戦には、勝ちと負けの判定がある。その基準の示し方はプロバイダーによって違う。
Wyscoutは最初にボールに触れた選手を勝者とし、その後にどうなったかは問わない。ファウルがあった場合は、受けた側を勝者とする。J STATSも、先にボールに触った選手を勝利として数える。
一方、Optaの定義は、どの時点で勝敗が決まるかを具体的に書いていない。ボールの競り合いに勝った選手(wins the ball)を勝者とする、という書き方である。
先に触れた選手を勝者とする決め方では、空中戦に勝っても自チームのボールになったとは限らない。競り合いのあとにどちらがボールを拾ったかは、空中戦の勝敗には入らない。
勝ちと負けが対になる
空中戦は、勝った選手と負けた選手が同時に決まる。Optaの定義でも、1つの勝ちには対応する1つの負けが生じるとされている。
- 空中戦勝率 = 空中戦勝利数 ÷ 空中戦の試行数 × 100
- 空中戦の試行数 = 勝利数 + 敗北数
この数え方では、リーグ全体を合計した勝率は50%になる。チーム単位のばらつきも小さく、J1のチーム別の集計では9割が45〜55%に収まる。
攻守で勝ちやすさが変わる
同じ空中戦でも、ボールを収めにいく側より、それを跳ね返す側のほうが勝ちやすい。
跳ね返す側はボールの来る方向を向いて守れるため、相手とボールの両方を視野に入れやすい。収めにいく側は、ボールを追う動きのなかで背後の相手を確かめることになる。この違いが、先に触れられるかどうかを分ける一因になる。
あるデータ分析企業の集計では、攻撃側として競った空中戦の勝率が中央値42.6%、守備側として競った空中戦が53.6%だった[*出典]。
空中戦勝率はこの2つを分けていないため、攻撃側として競ることが多い選手と、守備側として競ることが多い選手を勝率だけで並べても、条件をそろえた比較にはなりづらい。
注意点
相手の強さは勝率に入らない
空中戦勝率には、誰と競ったかが表れない。強い相手と競ることの多い選手も、そうでない選手も、勝率が同じなら見分けがつかない。
これに対しては、チェスなどで使われるレーティングの考え方を応用し、誰に勝ったかで評価が変わる仕組みも提案されている。強い相手に勝つほど高く評価されるため、勝率では横並びの選手にも差がつく。
こうした仕組みを使うと、何が空中戦の強さを左右するかも見えてくる。ある評価では、身長との相関が0.4台にとどまる[*出典]。高い選手ほど評価も高い傾向はあるが、それだけで序列は決まらない。
競り合いになった場面だけが数字になる
原則として、空中戦として数えられるのは競り合いが起きた場面だけである。
選手は空中でボールを競るまでに、落下点を読み、相手よりも有利なポジションを取って身体を入れるといった駆け引きをしている。競り合いの結果は、跳ぶ動作だけでなく、ボールが届く前のこうした段階にも左右される。
駆け引きの段階で相手を締め出せば、競り合いそのものが起きない。そのため、巧みに競らせないままボールを処理したプレーは、空中戦として記録に残らないこともある。
また、競り合いが起きたかどうかの線引きは、定義だけでは決まらない。個々の場面をどう見るかは、記録する側の判断になる。
参考
- “Opta Football Stats Definitions” (Opta Analyst, 2024) https://theanalyst.com/articles/opta-football-stats-definitions
- “StatsBomb Open Data Specification v1.1” (StatsBomb, 2019) https://github.com/hudl/open-data/blob/master/doc/StatsBomb%20Open%20Data%20Specification%20v1.1.pdf
- “Aerial duel” (Wyscout Glossary) https://dataglossary.wyscout.com/aerial_duel/
- “AERO: a new aerial skill metric” (Soccerment, 2023) https://blog.soccerment.com/aero-a-new-aerial-skill-metric/
- Wesley Van Rooij “Aerial Duels Won” (Sportmonks, 2025) https://www.sportmonks.com/glossary/aerial-duels-won/
