ハイインテンシティ走行とは

ハイインテンシティ走行は、走行距離のうち高速度域で走った距離や割合を切り出すフィジカル指標群である。どれだけ走ったかではなく、走った距離のうちどれだけが高強度だったかを見る。

「高速度域」の目安はFIFA・UEFAの男子基準で時速20km以上、女子基準で時速19km以上とされる。ハイインテンシティ走行の距離が総走行距離に占める割合を表したものがHIRR(ハイインテンシティ走行比率:High Intensity Running Ratio)で、フィールドプレーヤーを対象に算出される。男子トップリーグの試合では、おおむね10%弱の値になる。

仕組みと読み方

何をハイインテンシティ走行と呼ぶか

FIFAとUEFAの男子公式大会では、走行速度を以下の5段階に区分している。

ゾーン速度範囲名称
Zone 10〜7 km/h歩行
Zone 27〜15 km/hジョグ
Zone 315〜20 km/hランニング
Zone 420〜25 km/h高強度走
Zone 525 km/h以上スプリント

このうちZone 4とZone 5を合わせた時速20km以上がハイインテンシティ走行にあたる。

ただし「高強度」を何km/hからとするかはプロバイダーや研究者によって異なる。速度帯の設定自体をクラブごとのカスタマイズに委ねる設計を採るGPSプロバイダーもあり、「高強度走行」に業界統一の定義は存在しないのが現状である。

HIRRの読み取り方

HIRRは、高強度走行距離を総走行距離で割って求める。

  • HIRR(%) = 高強度走行距離 ÷ 総走行距離 × 100

高強度走行距離が同じ1.2kmの選手でも、総走行距離が異なればHIRRは変わる。

総走行距離高強度走行距離(Zone 4 + Zone 5)HIRR
選手A10.0km1.2km12.0%
選手B13.0km1.2km9.2%

学術研究では、スプリント帯域(Zone 5、時速25km以上)が総走行距離に占める割合は約1〜3%とされており、高強度走行の大部分はZone 4(時速20〜25km)が占める。速度帯が上がるほど、占める割合は急速に小さくなる。

ボール保持時と非保持時

高強度走行は、ボール保持時(in possession)と非保持時(out of possession)に区分して分析されることもある。この分割があると、攻撃局面と守備局面のどちらで高強度走行が発生しているかを区別できる。

非保持時にプレスをかけて高い位置で奪いに行くチームと、保持時にスプリントを多用するチームとでは、高強度走行の内訳が異なって見える。チームの戦術的な特徴を読み取る手がかりの一つとして使われている。

限界と注意点

「高強度」の定義が統一されていない

「高強度走行」の閾値は、FIFAの男子ワールドカップ分析では時速20kmが基準だが、学術研究では14.4〜21.1 km/hの範囲で設定されている。異なるソースの数値を並べて比較する場合、それぞれが何を「高強度」と呼んでいるかを先に確認する必要がある。

用語の混在も加わる。英語圏の文献ではHigh-Intensity Running(HIR)、High-Speed Running(HSR)、Very High-Speed Running(VHSR)が混在し、同じ語がスプリントを含む場合と含まない場合がある。ある文献の「HSR距離」が時速20km以上の合算なのか、20〜25kmの帯域だけなのかは、使われている定義を確認しないとわからない。

選手ごとの強度差は反映されない

時速20km以上を一律に「高強度」とする絶対閾値には、選手間の身体能力差を反映できない面がある。同じ時速20kmでも、足の速さが異なればその選手にとっての負荷は変わる

  • 最高速度35km/hの選手にとって → 最大速度の約57%
  • 最高速度30km/hの選手にとって → 最大速度の約67%

後者にとっては相対的に高い強度で走っているが、絶対閾値では同じ「高強度走行」として扱われる。学術研究では、選手ごとの最高速度や生理学的な基準に応じて閾値を調整する個別化閾値の方法も提案されている。ただし、チーム間やリーグ間で比較できるように、絶対閾値が広く採用されている。

比率が高い=貢献が大きい、ではない

HIRRが高い場合、走行距離に占める高強度走行の割合が大きかったと読める。ただし、それが戦術的に有効な走りだったかどうかは比率からだけは読み取れない。マークを外すためのスプリント、クリア後のこぼれ球を回収しに走った距離、スペースを空けるための動き出し。いずれも時速20km以上なら同じように加算される。

逆にHIRRが低くても、ポジショニングや味方との連携で高強度の走りを最小限に抑えている場合もある。高強度走行の中身、つまりどこで何のために走ったかを読み取るには、イベントデータや映像との組み合わせが欠かせない。

走りの中身に加え、インプレー時間(APT)もHIRRの値に影響しうる。試合によってHIRRに差がある場合、その一因がインプレー時間の違いにある可能性がある。

関連する指標

参考