スルーパスとは
スルーパス(Through Ball)は、相手ディフェンスラインの背後にあるスペースへ、味方の走り込みを狙って出すパスである。
敵陣の中央で通すことができれば、味方は相手DFの背後でボールを持ち、GKと1対1になる場面も生まれる。出し手には、味方の足元ではなく、受け手が走り込む先のスペースへボールを送ることが求められる。
ただし、パスの強さやタイミングが受け手と合わなければ通らない。強すぎれば味方が追いつけず、弱すぎれば相手DFに取られる。出し手と受け手の意思疎通が問われる、難易度の高いパスといえる。
定義と読み方
プロバイダーごとの定義
主要なデータプロバイダーの定義を整理すると、次のとおりである。
| プロバイダー | スルーパスの定義 |
|---|---|
| Opta | 味方選手が走り込んで受けられるように、守備陣を割って通すパス |
| StatsBomb | 守備の最終ラインを抜くパス |
| Wyscout | ディフェンスラインの裏のスペースへ、味方が競り合えるように出すパス |
| J STATS | 味方が相手最終ラインの裏に走り込むスペースを狙ったパス。パスの高さは一度も身長を越えないことが条件。守備側の選手の間を通したものだけでなく、サイドのスペースを狙ったものも含む。セットプレーは含まず、キックによるパスに限定。 |
※各プロバイダーの公式定義の出典は参考セクションを参照
パスの高さの扱い
スルーパスの判定でひとつ難しいのは、どの高さのパスまでを認めるかである。
スルーパスといえば、地上を鋭く這うグラウンダーのパスを思い浮かべることが多い。ただ、ディフェンスラインの背後を狙うパスには、ループパスのような浮き球や、頭上を大きく越えるロングフィードもある。
たとえばJ STATSは、パスの高さが一度も身長を越えないことを条件とし、Wyscoutは浮き球のスルーパスも例に挙げている。一方でOptaとStatsBombの公開されている定義文には、高さについての条件は示されていない。
つまり、ループパスのような浮き球がスルーパスとしてカウントされるかは、プロバイダーや個々の判定によっても変わってくる。
注意点
受け手である味方のプレーに左右される
スルーパスの記録自体は出し手に付くが、実際にパスが通るかどうかは、受け手となる味方のプレーにも大きく左右される。
受け手は、相手のディフェンスラインと駆け引きしながらギャップを見つけ、オフサイドにならないタイミングで裏へ抜け出し、来たボールをコントロールしなければならない。
スルーパスの数字は、出し手の能力だけでなく、受け手のオフ・ザ・ボールの動きや瞬発力、チーム全体として背後をどこまで狙うかという戦術によっても変わりうる。
中央とサイドの違い
スルーパスは、その出し先が中央かサイドかで、通す難しさや成功率が変わる。
中央へのスルーパスは、一般的に通る確率が低い。守備では中央を固めるのがセオリーなのに加え、ディフェンスラインの背後はGKが飛び出して対応できるためである。ただし、通れば受け手はそのままGKと1対1となり、決定機を迎えやすい。
一方、サイドの裏は通しやすい代わりに、受けた地点がゴールから遠く、シュートを打つにしても角度は狭い。相手守備からすると、GKはシュートコースを切りやすく、DFが戻って対応する時間も残されている。
そのため、選手のスルーパス成功数・率を比べるときは、パスの出し先の傾向や選手のポジションも合わせて見る必要がある。
参考
- “Opta Football Stats Definitions” (Opta Analyst, 2024) https://theanalyst.com/articles/opta-football-stats-definitions
- “StatsBomb Open Data Specification v1.1” (StatsBomb, 2019) https://github.com/hudl/open-data/blob/master/doc/StatsBomb%20Open%20Data%20Specification%20v1.1.pdf
- “Through pass” (Wyscout Glossary) https://dataglossary.wyscout.com/through_pass/
- 「J STATS REPORT 2025」(Jリーグ, 2026) https://www.jleague.jp/news/article/33433/
- Luca Pappalardo et al. A public data set of spatio-temporal match events in soccer competitions (2019)